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携帯電話はなぜフライト時にセキュリティ上の問題となるのか?

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7月6日、アメリカ運輸保安局(TSA)は、搭乗時の電子機器に対して、新たな保安対策を取ることを発表した。

国土安全保障省とTSAによると、新しい対策では、旅客は保安上の目的で、携帯電話などの電源を入れるよう求められる場合がある。その際に電源が入らなければ、機内に持ちこむことは許可されず、さらに持ち主も追加セキュリティチェックを受ける可能性がある、というものだ。

Photo:Suvarnabhumi  Airport Bangkok By:Str1ke
Photo:Suvarnabhumi Airport Bangkok By Str1ke

これを受け、7月8日アメリカCBSニュースは、この対策に対して以下のような見解を示した。
【記事元】http://www.cbsnews.com/news/how-cellphones-could-pose-a-security-threat/

■X線シグネチャ
今回の対策で、まず考えられるのが、携帯電話やその他の電子機器の内部に爆弾が隠されている可能性が考慮されたのではないか、ということである。政府が保安対策を強化する背景には、具体的な情報があってのことではないという。だが、テクノロジー及び保安の専門家数名がCBSニュースに語ったところによると、今回のTSAの保安対策は、電子機器の「X線シグネチャ」に関連している可能性がある、とのこと。

保安検査で通常の携帯電話にX線投射すると、電子板、ワイヤーのほかに、バッテリーが真っ黒い固まりとして見える。テロリストはあらかじめバッテリーを取り外し、同じサイズのプラスティック爆弾をはめ込むことが可能なのである。十年前、そうした事態を恐れたTSAが、旅客に携帯電話やノートパソコンの中にあるのが本物のバッテリーかどうか、電源を入れるよう求めたことがあった。

ところが空港のX線検査のスクリーニング方法は進歩し、爆発物はバッテリーとは異なる密度を持つことが、X線シグネチャによって発見できるようになったのである。現に、検査官はこのX線シグネチャによって、爆発物がバッテリーに偽装されているのを発見している。

専門家筋は、現行のシステムの裏をかくような、より高性能な爆弾製造が可能になったのではないかと推測している。McAfee社のゲイリー・デイヴィスは、X線の面でバッテリーの特性に酷似した爆薬を開発したのかもしれないとCBSニュースに語った。

全米科学アカデミーのCSTB部門の首席科学官であるハーバート・リンも、その可能性に同意する。テロリストが携帯電話に合うように作られ、同様の外見を持った爆発物の開発を計画していることは、十分ありうることだと言う。

TSAによる「電源を入れる」テストは、その種の脅威が起こるのを防ぐことができるのだろうか。確かにバッテリーが改造されていないことを確認する、簡単な方法であるようには思われる。

だが、リンはこのテストは、絶対確実ではないという。「テロリストがハーフサイズのバッテリーを開発し、残った半分をバッテリーに酷似した爆発物にするという可能性も想定しうるのです」その場合、電源は入る。だが、幸いなことに、リンはその可能性は低いという。「それはおそらく検出可能でしょう。しかも携帯電話用バッテリーを制作することは、大変むずかしいのです」

■携帯電話が引き金に?
爆発物の遠隔起動装置の一部に携帯電話を組み込む方法もある。テロリストが携帯電話を使って、もうひとつの爆弾に繋いだ携帯電話に電話をかける。呼び出し音が鳴り終わると爆発するように設計されているのである。こうしたトリガーを用いた方法は、これまでイラクやアフガニスタン、パキスタンなどで、即席爆発装置に使用されてきた。

もしテロリストが商業便の搭乗に成功した場合、携帯電話を使って爆発装置を起動させ、貨物室に積み込まれた荷物や、または貨物室そのものを爆発させることが可能だろうか。

おそらくそれは不可能である。デイヴィスは言う。「携帯電話によって通信する方法は4つあります。携帯電話、Wi-Fi、ブルートゥース、及びメールです。しかもいずれの方法でも、技術的に限界があります」デイヴィスによると、飛行機内では、受信状態がもっともよい低高度であっても、携帯電話の受信能力にはきわめてむらがある。さらに通常の巡航高度では、通話やメールの受信が不可能なことも多い。さらに、リンによれば、ブルートゥースに制御された爆弾同様、「Wi-Fi爆弾制作は、きわめて困難」だということである。

Photo:DIY Cellphone By:dam
Photo:DIY Cellphone By dam

■ほかに携帯電話が脅威になる可能性はあるのか?
デイヴィスによれば、飛行機を落とそうと、コックピットに向けて悪意のあるメッセージを送る可能性は、考慮に入れる必要がないという。「携帯電話では飛行機に通信することはできません。周波数がまるで異なっているのです」

あるいは電話が奪われたり乗っ取られたりして、テロリストに利用されるようなことはあるのだろうか。リンもデイヴィスも、その可能性は低いという。

リンとデイヴィスは、セキュリティ対策は、厳密な科学ではないということで同意する。「セキュリティ対策というのは、主観的判断なのです。客観的に裏付ける方法はありません。そのため、つねにセキュリティと利便性というふたつの要素のバランスを取ることが必要なのです」とリンは語る。

デイヴィスは旅客者にこう呼びかける。「空港にはできるだけ早く行ってください。行列は長くなりそうですから」

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